鳴かぬなら…… 3

これまでの二年と数ヶ月を顧みれば思いは込み上げ、握る拳は汗ばむばかり。少し多すぎるくらいのエピソードが今日の舞台を一段と盛り上げるから、観客席に並ぶ面子もまた、同じ鼓動を胸に刻んでいる。迫力と緊張に満ちたコートの五人とも競り合えるほどの、この熱意は今彼らに伝わっているだろうか。
負けられないのは同じこと。乗り出した応援席より腹の底から、鳴り止むことを知らないこの鼓動を皆が声に乗せる。
「いけ花道ーっ!」
県立高湘北の名を懸けた運命の八月。決勝戦だった――――。





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