hand in hand through them

覗き趣味の俺らは自信を持つことを優先している。どんな悪戯を極める姿勢にも、喧嘩だってそうだ。もちろん、見つかった後の逃げ足の速さにも。
…………なに? 逃げ遅れたって? そりゃぁ自業自得だ。高宮は暴飲暴食をやめるべきだ。それにもっと運動しろよ、花道を見習いな。それでも無理なら原付を勧めるぜ? なんといっても四人乗りが許されるからな。ついでに免許もいらねぇ。いや、取得した覚えがねぇや。テクニックなんてのは関係ねぇの。要は安全運転さ。
ちなみにと言っちゃなんだが、日頃の行いもぎりぎりの安全運転を心がけている。だというのに、毎日のように絶えない喧嘩が今日も俺たちを待っているから、楽じゃない。
「懲りないねぇ?」
「ああ懲りねぇよ」
その都度繰り返す自問自答――――。負けたことがなかった。だから喧嘩するんだ。人の痛みがわからないから。鳩尾を抉られて呼吸も出来ない感覚が。いっそのこと負かしてくれよ。もう暴力は性に合わないんだ。わかるか? これってスゲェ惨めで哀れで、ついでに飲み過ぎて勃起不能ときたからもう救いようがねぇってな。よって、このエロ本ともサヨナラだ。
「忠、これやるよ。どーせモザイクばっかだし。無修正だなんて、騙されたぜ」
「いや、俺それこの前見た」
こんなことはしょっちゅうだった。もう見た奴は表紙に印でも付けた方がいい。
「全員見たら、とっとと山にでも捨てちまえよ。邪魔でしゃーねぇ」
そう言って、雑誌をまとめ出した大楠の腕を洋平の手がひしと掴んでいた。
「山に捨てたりしたら、被写体の女性が可哀想だろ? 誰だって皆人の子、親御さんに祟られるぜ」
そう、備わった道徳心を胸に。地球にもよくないと環境保護を謳いながら、今その一冊を、一枚一枚を小慣れた手付きで…………。
こうして俺たちの優しさが環境にも捧げられると思えば、それだけで心が満ち足りる。こうした有意義な時間を日々過ごしている。中でも最も有意義な時間というのが、この熱き心、若き汗が迸る瞬間――――つまり青春だ。
昂る鼓動を抑え、寝る間も惜しみ、期待に期待を募らせた三日後のこと。待ちに待ったこの日はそう――――花道の試合の応援だった。
爽快なダンクを決めたらそこはもうお祭り騒ぎ。増えに増えた祝福グッズで今日も派手にやらかしてやる。周りの迷惑なんて気にしない。あの花道が喜ぶんだから、全て許されるはずだろう? 得意の紙吹雪はいつもの倍だ。パーッと惜しみなく降り撒いてやる。
「さあ花道、受け取ってくれ。俺たちの熱き、そして清きこの友情を!!」



「………………ん? なんだ花道? モザイクが降ってきただと?」
それでも俺たちの友情は無修正だ。花道はきっと、信じてくれる…………。