その24【牧誕@グループトーク】

某アプリのグループトークでバースデー

「牧おめでとう」
「おめでとうございます」

「ああ」
「なんだまた怒ってるのか」
「あんま怒っと皺になりますよ?」
「別に怒ってない」
「じゃあどうしたんだ牧」
「だっておかしいだろ? どうして今頃、しかも俺だけ誕生日なんだ? 俺以外誰もやってないじゃないか」
「特に意味はないけど、ちなみにプレゼントもないけど、あえて答えるなら今日が牧さんの誕生日だからですよ」
「牧がいつも集まる度に不服を言うから今日はグループトークで済まそうってわけだ」
「ほお」
「そうだぞ牧、みんな祝ってくれてるんだ。俺からもプレゼントないけどな」
「いらん」
「つまりプレゼントがないから怒ってるのか?」
「違う」
「zzz……」
「流川……」
「じゃあ何? また年取るのが嬉しくないとか言ってるわけ?」
「別にそんなんじゃない」
「じゃあなんだ?」
「一つ訊く。みんなして、なんだそのアイコンは」
「そんな今更だな。いつかのシンボルマークだろ?」
「一応川の力作だからみんな使ってるんですよ」
「なんで使ってないのが俺だけなんだ……」
「知らねーよ」
「何もアイコンの変え方ぐらいわかるだろ?」
「寧ろ自分の顔写真使ってる方が珍しいぞ」
「そ、そうなのか……」
「顔写真使う奴はナルシスト」
「ああ、なんとなくわかる気がする」
「俺はナルシストじゃない」
「まあナルシストではないよな?」
「こん中でナルシストっつったら…………流川か?」
「俺はモテるだけ」
「うわぁ自分で言ってる」
「流川はナルシストというより自信家って感じかな? でもちゃんと謙虚なところもあるから、本当しっかりしてるよ」
「俺もアイコン変えたい」
「変えればいいだろ?」
「何にすべきかわからん」
「そこは牧の好きな物にしろよ」
「といっても、自分の写真がナルシストなら、他はなんだ?」
「あ、気にしてる……」
「そうだな……例えば小洒落た雰囲気の写真やイラストにしてるヤツなんか……」
「アーティスト」
「んまあ……」
「あとよく多いのが旅行に行った時の写真とか」
「ツーリスト」
「おい流川……」
「ジーンズ履いてたらジーニストだな。じゃあ、いい感じのティーシャツとかは?」
「それは……遠慮しておく」
「そうか? いいと思うんだけどな」
「それは木暮にしか許されない」
「ん? どういうこと?」
「そもそもアイコンなんかどうでもいいだろ?」
「そーそ。今適当に撮った写真とかでいいんすよ」
「適当にか……やってみる」
「楽しみにしてます」




「おい、なんでだ?」
「どうした?」
「何度撮っても俺しか写らん」
「ナルシストだから」
「それは、内側のカメラ使ってるからじゃないのか?」
「内側……?」
「外側に変えればいいんですよ」
「わかった」





「クソッ、何故だ!」
「もしかしてまだ出来ねーの?」
「外側に変えたら今度は何も写らん。真っ黒だ」
「自分の接写しすぎ」
「カメラはちゃんと切り替えたんですか?」
「ああ」
「レンズの所指で押さえたりしてるんじゃないか?」
「いや……ーーあ」
「ん?」
「ケースを上下逆に付けてた」
「ハァ…………」
「さすがっつーかなんつーか」
「よし、外した」
「これでもう大丈夫ですね」
「撮ったら一応チェックしてくれ」
「了解」





「とりあえず、こんなんでいいか?」



「ふーん」
「なんだただの壁じゃな……ん?」
「あれ? なんか見えるぞ」
「反転してみましょう」



 

「見えた!」
「マジだ。ヤベェってこれ!」
「牧さんこれ早く削除しないと」
「部屋に憑いてるのか牧に憑いてるのか」
「なんか見覚えある気もするけどとりあえず削除だ牧!」

「あ、ああ……」
「もし牧に憑いてるとしたら今後も何かしら写り込みそうだな」
「もう写真使えないじゃないか」
「ここはもう大人しく牧さんもアレ使うべきですよ」
「そうだな。使ってないの牧だけだし」
「アレか……。アレはな……」
「正に牧のために作られたものだぞ?」
「俺からの誕生日プレゼント」
「んなこと言われちまったら別の選べねーな」
「…………わかった」





「これでいいか?」
「新しい牧だな」
「生まれ変わったんだな」
「誕生日ですからね」
「めでてぇめでてぇ」
「毛ー生えてやがる」
「やったの流川だろ」
「手がすべっただけ」
「まあいいじゃないか。これならナルシストでもなんでもない」
「ホクロに毛も生えてないがな」
「また気にしてる……」