その20【節分】

節分ですよ

牧「はぁ……」
暮「どうしたんだ牧?溜息なんか吐いて」
神「何か思い悩むことでもあるんですか?」
牧「別にこれといったこともないんだが、最近どうも災難続きだ」
形「厄年か?」
流「納得」
牧「…………」
洋「ツイテねー時ってとことんツイテねーんだよな。俺も何度スったことか」
神「まさか、牧さんも賭け事?」
牧「違う。テストの範囲間違えたり、電車乗り過ごしたりうっかり木暮のパンツ履いてたりetc……毎日何かしらよくないことが起こる」
洋「メガネくんのパンツって……」
牧「ロッカーで先輩に馬鹿笑いされた」
暮「おいおい、俺笑われるようなパンツなんか持ってないぞ」
流「持ってた……」
形「だいたい、どれも牧の不注意じゃないか」
牧「いや、もっと自分じゃどうにもできない何かが働いてた気がする」
神「つまりなんか憑いてるってこと?」
形「じゃあやはり厄年か」
牧「………」
暮「厄年とまではいかなくとも、厄払いした方がいいのかもな」
神「それなら今日節分だし、豆撒きすればいいんですよ」
暮「お、そういえばそうだったな」
洋「じゃ、俺そこのコンビニで豆買ってくるわ」

洋平退室

暮「それで、鬼は誰がやる?」
形「そりゃ牧に決まってるだろ。正に厳つい鬼の風貌をしてる」
神「風貌って意味ではピッタリだけど、牧さんは今日豆をぶつけるべき側だから」
形「じゃあ次点で水戸くんか」
神「鬼もちびる眼光、鬼ものたうちまわる腕力……」
牧「仕返しが怖い。無理だ」
暮「じゃあ、牧がこの中で一番豆をぶつけたいヤツを選べよ」
牧「俺が、一番ぶつけたい…………………」
形「牧、俺を見るな」
神「決まりですね。花形さんが鬼」
暮「背も高いしピッタリだ」
流「先輩ツイてる」
形「待て、これじゃクリスマスの二の舞じゃないか」
牧「クリスマスに着たのは俺だ。花形は着てないだろ」
形「ということは牧、まさかその仕返しに……」
牧「ミニスカサンタと鬼じゃ恥ずかしさが比じゃない」
形「俺はそういうことを言ってるんじゃない。いつまでも根に持つ牧が男らしくないと言ってる」
流「…………」
牧「男らしくないと言うなら自分が着ればよかっただろ?」
形「女装のどこが男らしい」
牧「今度は鬼だ。女装じゃない」
暮「まあまあまあ二人とも…………」
神「こうして間に入らないと一生続きそうですね」
流「zzz…………」

洋平帰還

洋「ただいま。で、鬼決まったの?」
神「まだ」
洋「しゃーねーな。俺が一肌脱ぐとすっか」
形「水戸くんが?」
牧「言っとくが、反撃はやめてくれよ」
洋「了解。それじゃぁ豆代と合わせて五千円ね」
牧「か、金取るのか……」
洋「牧さんの厄除け料。神社でいう奉納金ってやつだ」
牧「いや、奉納も何もただの節分だが」
神「ぼったくりな神主だね」
暮「別に俺がやってやってもいいんだけどな」
洋「あ、メガネくんやる?」
暮「ああ。何より今日ピッタリのパンツ履いてきたんだ」
形「ピッタリのパンツって……」
暮「鬼のパンツ」

木暮、徐に脱衣

神「あ、ホントだ………」
形「なんて準備がいいんだ………」
洋「よし、そしたらあとはツノだな」

洋平、懐から未開封のクラッカーを取り出し、木暮の頭部に装着

神「ねえ、洋平は今どこからそのクラッカー出したの?」
洋「企業秘密」
形「おそらくパーティグッズ一式は常に携帯してるんだろう」
牧「何のために……」
暮「まぁいいよ。準備出来たし、早速始めるぞ」

木暮、一度退室 後、鬼のパンツで登場

暮「へへ、なんか言ったほうがいいのかな?えっと、泣く子はいねぇか~、とかさ」

「………………」

牧「ダメだ木暮、まったく豆をぶつける気にならん」
洋「ああ、こりゃ無理だな」
神「牧さんの気持ちがよくわかるよ」
形「ここまで子供が喜びそうなナマハゲ見たことがない」
暮「おいおい、せっかく鬼やってるんだから、さっさと豆投げてくれよ」
牧「そう言われてもだな……」
洋「メガネくんは福の神だからな、色んな意味で」
神「…………そうだ!牧さんが目隠しすればいいんですよ」
形「目隠し……?」
洋「もしかして、スイカ割り的な?」
神「まあそんな感じ。そうすれば木暮さんのこと見えないし、ちょっとしたゲーム性もあるでしょ?」
暮「はは、なるほどな」
洋「誰がぶつけられっかわかんねぇわけだ」
形「まあ豆だし、かまわない」

牧、目隠し完了

牧「よし、じゃあいくぞ」

目隠し牧、振りかぶって第一豆、投げ…………

流「痛てっ」
形「流川に当たったな」
神「いいんじゃない?流川もこれで目が覚めただろ?」
洋「いや待て、様子が変だ」

流川、寝ぼけ眼で立ち上がり……

流「俺の眠りを妨げるヤツは何人たりとも許さん」
形「る、流川…………!?」
暮「まるで鬼の形相だ……」
洋「牧さん、早く逃げて!」
牧「逃げろと言われても、方向がわからないんだ」
神「いや、ここは鬼退治ですよ。牧さんまた豆をぶつけて!」
牧「こ、こっちか?」
暮「痛っ」
洋「鬼は流川だ!牧さんもっと右!」
牧「右だな!それっ」
流「はッ……――――!」

豆をぶつけられた流川、正気に戻る

流「あれ……?牧さん何してんすか?メガ……木暮さんまで……」
暮「あ、ああ、目隠し豆撒きしてたところだ」
流「はぁ」
洋「まぁこんなもんでいんじゃね?こんだけ馬鹿騒ぎすりゃ牧さんの厄もぶっとんだっしょ」
神「どうですか牧さん?」
牧「どうも何も、まだ何もしてないからな」
形「牧のパンツが正常ならもうこれでお開きにしよう」
洋「だな」

牧、目隠しを外しパンツを確認……

牧「何故だ…………」
暮「ん?どうしたんだ?」
牧「何故俺も、鬼のパンツなんだ…………」
暮「あ、それ俺の……」
神「さっきの鬼のパンツと色違いですね」
暮「五色組で千円だったんだよ。といっても、浴室横のボックスに閉まっておいたはずなんだが……」
形「……ほら、やはりそういうことだ」
神「寧ろ全然変わってなくて安心してます」
洋「はい、解散解散」
流「…………?」
牧「……………」
暮「牧、俺が悪かった。ちゃんとボックスに名前書いとけばよかったんだ」
牧「あれ?靴下が左右バラバラ……」


おわり