その19【めりーくりすます】

イブ?当日?どちらでも……

牧「何度も言う。クリスマスは個々でやるべきだ。といより別にやらんでもいい」
形「集まってしまったんだからもう遅い」
暮「こういうのはみんなでやった方が楽しいじゃないか」
洋「今年はプレゼント交換がないだけマシだ」
流「グダグダ言ってねぇで早く始めろ」
神「な……何?どうしたの流川?」
洋「やけに挑発的だな」
牧「珍しく苛々してるぞ」
流「別に」
暮「ひょっとして、流川腹減ってるのか?ケーキ食べたいならもう準備するか」
洋「そうだな。せっかくデケェの用意したんだし、始めっとすっか」

ケーキ登場

牧「本当にデカイな……」
形「これは誰が買ってきたんだ?」
暮「買ってきたんじゃなくて、俺と神と水戸くんで作ったんだ」
牧「ほう。なかなかまともじゃないか」
神「洋平はパティシエにでもなるべきだよ」
洋「いや、甘いもんばっか食ってらんね」
形「で、ケーキカットは誰がやる?」
流「俺」
形「そ、そうか……」

流川、ケーキ入刀 ……&皿に盛り付け

洋「今日の流川はやけに乗り気だな」
牧「何かあったのか?」
形「さあ…………」
神「いつもの流川よりいいよ。さっさと食べよ」
流「ダメ、まだ」
暮「ん?なんだ流川?」
流「まだサンタが来てねぇ」
神「サンタ?」
牧「まさか……信じてるのか?」
洋「信じたとこで昼間は来ねぇよ」
流「本人が来るっつった」
暮「本人って、サンタが?」
神「どこで会ったの?」
流「部屋」
牧「いつ?」
流「今朝」
洋「ってことは、花形さんも会ったわけ?」
形「いや…………」
神「赤い帽子に白ヒゲ着けた誰かってこと?」
流「そんなんじゃねぇ。黒縁かけたデケェヤツ」
牧「一人しかいないだろ…………」
神「花形さん、何してんですか……」
形「何もしてない。俺はただ…………」
流「サンタ来ねぇなら帰る」
形「な、待て、ケーキ食べたらきっと来る」
流「マジ?」
形「…………マジ」
流「いただきます」
牧「もう食べるのか」
暮「よほどサンタに会いたいんだな」
洋「で、またなんで花形さんはそんなこと言ったの?」
形「実は……今朝流川がなかなか起きなくて、眠いから今日は行きたくないと駄々をこねるもんだから、少し嘘を吐いた」
神「つまり、その嘘がサンタ……?」
洋「ひでぇ話だ」
暮「でも流川は信じてるんだな。もう三切れたいらげたぞ」
神「何も花形さんが白ヒゲ着けてコスプレでもすればいいじゃないですか」
形「まあ、そうなるわけだが……」
牧「やってやればいいじゃないか」
洋「俺そこの店で衣装買ってきましょうか?」
形「一応もう買ってある」
暮「なんだ、じゃあそっちで着替えてくればいいだろ」
形「そうなんだが、サイズもサイズだし、やはり少し……照れがある」
神「でも言ってしまったことにはやらなきゃ」
牧「流川六つめいくぞ……」
暮「おい流川、食べ過ぎだ」
形「…………わかった。着替えてくる」

花形、退室

洋「まったく流川も単純だなぁ。サンタ見たさにこんなモリモリ食うなんて」
神「ホント素直で可愛いよ」
洋「…………」
暮「流川よかったな。もう少しでサンタが来るぞ」
牧「だからもう食べるのやめろ。腹壊すぞ」
流「透のやつ……やっと腹くくったか」
神「やっとって流川、こうなることわかってたの?」
流「透は単純」
洋「これのどこが素直だ…………」
牧「花形が憐れに思えてきた」
暮「嘘を吐いた罰ってやつだな」
流「自業自得」

そこに花形帰還……?

暮「花形、何覗いてるんだ?」
神「着替え済みました?」
形「いやそれが…………」
暮「ん、どうした?」

木暮、神も退室

牧「何をやっているんだ……」
洋「花形さんの身長だから、きっとツンツルテンなんしょ」
流「ツンツルテ……(笑)」
洋「よかったな流川。最高のクリスマスプレゼントじゃねぇか」

そこに神が覗き込み……

神「牧さん、ちょっと……」
牧「ん?なんだ?」

牧も退室

洋「ずいぶんかかってんな」
流「透のくせに焦らしてやがって」
洋「俺としちゃぁ、なんだかんだで皆に乗せられて意外と乗り気な花形さんに五百円だな」
流「俺は恥ずかしくて照れ死にする透に五億円」
洋「五億?流川それぜってぇだな」
流「俺に二言はねぇ」

そこに四人が帰還……………

洋「あれ?花形さん着替えは?」
形「いや、その実は……」
洋「って、牧さん………………」
流「なぜ…………」

三人の後ろに立つサンタクロースは牧だった

洋「やちょっと待って、しかもなんでミニスカ!?」
神「理由は全部話すよ。まず花形さんが買ってきたコスプレ……女性用だったんだ」
形「買うのも恥ずかしくて急いでたから……まさかミニスカだったとは……」
流「やるな先輩」
洋「で、なんで牧さんなの?」
牧「花形が駄々をこねたんだ」
形「いくらなんでもミニスカは履けない」
洋「なるほど。つまりジャンケンで負けたのが牧さんってわけね」
神「いや、そうでもないんだな」
暮「ちゃんと理由はあるんだよ」
洋「へ?どんな?」
神「つまるところ、そもそも今度の件は流川の為のサンタクロースなわけだろ?花形さんの代わりに俺や木暮さんがやっても流川の為にはならないんだよ」
洋「それでどうして牧さんに至んの?」
暮「それは神が言ったんだ」
神「だって流川、このミニスカサンタの牧さん見てどう思う?寧ろ得した気分だろ?」
洋「得した気分って……まあすげぇ衝撃的ではあっけどよ」
流「牧さん一枚だけ、写真……」
牧「んなっ……断る。やめてくれ」
流「あ、撮っちゃった」
牧「消してくれ……」
流「ヤダ」
暮「ヤダって、流川その写真どうするんだ?」
流「使う」
形「何に?」
流「魔除け」
洋「まあ……確かに……」
流「うっとおしい勧誘や訪問販売も撃退」
牧「待て、どこに飾る気だ」
洋「にしても、牧さんもよくこんなこと引き受けましたね」
牧「んまぁ……」
神「そこは木暮さんのおかげだね」
暮「やめてくれよ」
洋「つまり……?」
形「今夜これを着るのは木暮だ」
洋「なるほどね」
牧「じゃあもう脱ぐぞ。流川、写真は削除だ」
流「ヤダ」
形「流川、牧にも一応肖像権というのがあってだな」
牧「一応だと?」
流「じゃあ買う」
神「いくらで?」
流「五億」
洋「ブフーッ」
神「やだな洋平噴き出すなよ」
洋「いやだって、流川、俺も流川もハズレ。まさか牧さんとはな……だから五億もなしだ」
神「二人で一体何してたの?」
流「これから先輩が照れ死んでくれれば五億入る」
形「な、なんだそれ」
洋「そんな賭け成り立たねぇよ」
形「言っとくが、俺は何もしないぞ」
流「先輩が着れば丸く収まる」
形「収まってたまるか」
神「それに花形さんがコレ着たら牧さん着た意味なくなっちゃう」
暮「牧の恥ずかし損だな」
牧「どうでもいい。もう脱ぐ」
流「あ、写真……」

カシャッ――――

流「あ…………」
洋「ゲ……」
形「よりによって牧の着替えの瞬間を……」
牧「るぅかぁわぁ……」
暮「ヤバイ、牧がキレるぞ!」
神「それにその写真、牧さんの尻写っちゃってる!」
流「ゲッ」
形「そう言うなら消してやれ」
流「…………わかった」
洋「あ、流川たんま。ちっと……」

洋平、流川を引き連れ退室

形「今日はやけに出入りが激しい」
暮「今度はあの二人……」
神「何してんだろ」
牧「……嫌な予感しかしない。見てくる」

牧も退室……しようとしたところに二人戻る

洋「ん?牧さんどうしたの?」
牧「いや、ちょっと気になっただけだ」
洋「はは、なんでもありませんよ。流川の携帯からちゃんと写真削除しただけ」
牧「本当か?」

流川の携帯確認

洋「ね?」
牧「ああ、安心した」
神「じゃあもう今日はお開きでいいよ」
暮「変なクリスマスだったな」
形「ケーキとサンタがあればクリスマスは成立する」
牧「もう二度とやらん……」

皆が続々と退室する中、その後方で……

神「で、洋平はさっき何したの?」
洋「ちょっと」
神「洋平のことだから、どうせ消す前に牧さんの写真転送させたんだろ?」
洋「まあね」
神「一体どうすんのその写真?」
洋「これがさ、その手の輩には大ウケなわけ。前に湘北でもうっかり尻出した某キャプテンがいて、これが意外に儲かんのなんの」
神「まさか商材……?」
洋「これで神さんのプレゼント代稼ぐんだ。感謝してよ」
神「ハァ、なんだろこの罪悪感……」


おわり