その18【カラーですよ】

カラーですよ。

神「うわぁ、ホントにカラーだ」
暮「生首だな」
牧「モノクロでよかっただろ」
形「そうだな、牧の肌色は変わってないからな」
牧「…………」
洋「まあ、若干わかりやすくなったわけだが、重要なのは顔じゃないっしょ?」
形「中身か……」
牧「そこはもうどうしようもない」
神「人間そのものが成長して初めて伴う部分だからね」
暮「つまり……?」
神「流川を見てごらんよ」
流「zzz……」
形「なるほど」
牧「成長なんてあったもんじゃないな」
暮「そうか?なにかしら成長してるだろ」
洋「寝る子は育つっつーけど、ありゃ関係ねぇよ」
形「それは体じゃ……?」
神「でも毎日のように夜更かししてたら、育つもんも育たないさ」
洋「夜更かしっつーか夜勤だけど……やっぱマジなんかな」
暮「人間夜は寝るように出来てるから。それに抗うことは成長の妨げになるかも」
洋「へぇ……じゃあちょっくら寝っか」
神「今から?ここで?」
洋「夜勤明けで疲れてるし、現にそれを許されてるヤツがいる」
暮「けど、ここでそう簡単に寝られる?」
形「状況が状況だからな。流川は特別だ」
暮「布団でもあれば……」
神「そんな誂え向きな…………って、あれ?こんなところに布団が!」
形「なに…………」
暮「部屋の隅だし、これなら寝られるんじゃないか?」
洋「だな。んじゃちぃと休ましてもらいますよ」
流「ども」
洋「どもって、なんで流川が布団入んだよ」
神「ていうか起きてたの?」
流「俺の俺による俺のための布団が偶々ここにあった」
形「俺による……って、その布団流川が持ってきたのか?」
流「zzz……」
洋「もう寝てら」
暮「じゃあ水戸くんも流川と寝ればいいよ」
形「え…………?」
神「そうだね。一緒に寝たら?」
洋「いやまぁ……いや、ヤダわ」
神「我儘言うなよ。布団は一つしかないんだから」
洋「別に我儘じゃ……」
神「じゃあ、俺が寝ようかな」
牧「何故そうなる」
神「流川ちょっと詰めてよ」
流「…………?」

神も布団イン

洋「まじで同衾しやがった……」
暮「はは、なんだか俺も眠くなってきたよ」
神「じゃあ木暮さんも寝ます?」
牧「もう満員だろ……」
神「大丈夫ですよ。流川もうちょっと詰めて…………って、流川それ何抱いてるの?」
形「コグマ……のぬいぐるみ?」
洋「流川ってそんなガラだったのか」
流「布団ん中入ってた」
神「入ってたから抱いたの?」
流「抱いてくれっつわれたから抱いてやった」
暮「そのぬいぐるみが言ったってこと?」
流「そう」
洋「まさか」
流「掌摘まんだら言った。ほら」

コグマ「だ・い・て〜♪」

洋「マジだ……」
神「これは……ホラー……」
形「うん……」
暮「でも俺、これに聞き覚えあるかも」
形「知ってるのか?」
暮「ああ。見覚えもある」
神「このコグマに?」
暮「うん。確か、スーパーでシール集めると貰える景品だったんだけど…………」
洋「あああれか。メガネくん、集めてたの?」
神「洋平も知ってるの?」
洋「ええ。五百円で1ポイント、貯めたポイントごとに景品が変わんの」
暮「そうそう。そのコグマgetまで確かあと千円だったんだ」
洋「スゲェな。俺諦めて捨てちまった」
形「木暮はそのポイントをどうしたんだ?」
暮「それが、いつも冷蔵庫に貼っておいたんだが、気付いたらなくなってたんだ」
神「なくなってた?」
暮「うーん、間違って捨てちゃったかな。別にコグマが欲しかったわけじゃないからいいけど」
形「牧がどこかにやったんじゃないのか」
牧「いや…………なくしてはいない」
神「じゃあ、持ってるんですか?」
牧「いや…………」
洋「じゃあなんなの?」
牧「……以前、木暮に買い物を頼まれた時、俺がカードを持っていってコグマと交換したんだ」
暮「なんだ、そうだったのか」
形「それで、牧は交換したそのコグマをどこにやったんだ?」
牧「それは………………」
洋「そもそもそのコグマがなんでここにあんだか」
神「まあこれが牧さんのコグマってわけじゃ」
形「いやしかし、もしこれが牧のだとしたら…………?」
牧「…………」
暮「そういや、牧は昨日どこ行ってたんだ?」
神「どういうことですか?」
暮「昨日夜に電話があって、遅くなるから先寝ててくれって。でも朝になっても帰ってなくて、今日ここで会ったのが初めて」
形「牧は何をしてたんだ?」
流「やましいこと」
牧「違う」
流「家に帰らず他の男抱いてた」
牧「…………!(ドキッ)」
形「当たってるのか……」
神「なんで流川が知ってるの?」
流「このコグマ……仄かに牧さん臭すっから」
形「加齢臭か?」
牧「…………」
神「言われてみれば確かに、この枕からも牧さん臭がする」
洋「寝なくてよかった……」
形「で、牧はなぜここに寝たんだ?」
牧「……昨日は電車で寝過ごして、帰りが深夜になってしまった」
洋「なるほど。でもなんで布団とコグマが?」
牧「それは…………」
形「今回が初めてじゃないってことだな」
神「そういえば、前そこの棚の中にカップ麺みつけたんですけど、もしかしてあれも牧さん?」
洋「ここをタダ宿として使ってやがったな」
牧「いやまぁ……そのだな……」
暮「何か帰りづらい事情でもあったのか?」
形「木暮の待つ部屋に帰らないなんて、最低だな」
牧「いや、夜中に起こしたくなかっただけだ」
暮「そんな物音くらいじゃ起きないよ」
洋「ってことは、やっぱマジでやましいことだったりすんの?」
牧「違う」
形「じゃあなんなんだ?」
牧「いやただ………………実は最近、鍵をなくしたことに気付いた」
洋「なんだそれ」
牧「ずっとどこかに忘れてるだけだと思っていたが、やはりどこにもないことに気付いた」
神「だったらここに泊まらず、木暮さんにそう言えばいいじゃないですか」
流「サ・イ・テー」
形「それはコグマの真似か……」
牧「言おうとしたが、何故か言い出せなかったんだ。スマン木暮」
暮「それは別にかまわないけど……こんな場所じゃ、寝起きも不便だっただろ」
洋「メガネくんは優し過ぎんだ」
形「少しはガツンと言ってやれ」
暮「そんな、コグマを抱いて寝るようなヤツに厳しいこと言えないよ」
神「フッ、アハハハハハ!」
洋「まあでもそこだな。牧さんが態々コグマをここに置いとくなんて」
流「抱いて寝るため」
形「牧もこう見えて寂しがりなんだろ」
牧「………………」
神「あ、でも待って。…………そうか、そうですよコグマですよ。抱いてって言うコグマ!」
洋「抱いてって言うコグ…………?」
形「なるほど」
洋「ああ!そういうことだったのか」
暮「え?なに?なんなんだ???」
コグマ「だ・い・て〜♪」
神「流川やめてよ」
牧「…………」
暮「まあいいけど、肝心の鍵はどこでなくしたんだ?」
流「ここ」
牧「な…………!?」
形「なぜ流川が持ってる……」
流「布団ん中あった」
神「きっと敷いた時にでも落ちたんですね」
牧「一応その周辺も探したんだが……」
流「大事なのは中身」
洋「はは、流川に言われちまったな」
コグマ「まったくだ」
流「!!?」
神「ねえ今、そいつなんか言った?」
洋「おい、それの中身調べてみろよ」
形「何かヤバイものが出てくるかもしれないぞ……」
流「俺が調べる」

流川、コグマの背中のチャック開ける

暮「な、何かいたか?」
流「………………いた」
形「何が?」
流「手紙」
神「……なんて書いてあるの?」
流「バカは見るー♪って」
洋「…………」
暮「どういうことだ……?」
形「色々と不気味だが、あの幼稚な声で言ってると思うと妙に腹立つな」
神「筆跡で何かわかるかな。流川それちょっと見せてよ」
流「ダメ」
神「なんで」
流「ウソだから」
形「ウソ……?」
流「うん」
神「………………」

洋「さぁて、神さん帰ろ」
暮「中身空っぽだったのか」
形「はぁ、今日もどっと疲れたな」


全員退散……の後方で……


流「牧さん、みんなには黙っときます」
牧「ああ、成長がないとか言って悪かったな。撤回だ。あとで菓子でも買ってやる」


おわり