その16【お宅訪問-形流】

形流部屋にやってきました。

洋「おじゃましやーす」
暮「うわぁ、なんだかうちと違うな」
神「造りが逆だと雰囲気も違うね」
牧「いや、造り以前にフローリングが……」
暮「そうか、畳がないんだ」
形「畳の上からフローリング状のカーペットを敷いた」
洋「寝室も?」
形「ああ」
神「あ、ホントだ」
形「おい勝手に寝室覗かないでくれ……」
流「zzz……」
暮「流川いないと思ったら、寝室で寝てたのか」
洋「すげぇな、ダブルベッドだ」
牧「よくここまで運べたな」
形「組み立て式だ」
神「居間も片付いてますね」
形「それなりに掃除はしている」
暮「何より涼しくて快適だ」
牧「これなら多少汗をかいても……」
形「牧、それはまさか……」
牧「グリップくらい構わないだろう」
形「…………」
暮「あ、あとお茶も持ってきたんだ。えっと……あれ?」
神「そのお茶、うっすらと濁ってますよ……」
暮「おかしいな、ちゃんと冷蔵庫に入れておいたし、昨日買ったばかりなんだけど」
洋「きっと品質には問題ねぇってやつだ。振れば大丈夫」
形「とりあえずコップ……」
暮「ああ……あれ?封も切ってあるぞ」
牧「スマン。今朝俺が少し飲んだ」
神「牧さんがすでに飲んでなんともないってことは、品質は問題ないんですね」
暮「それならよかった」

こうして注がれた濁り茶は各々に行き渡った。

洋「ウェェ……」
形「明らかに何か混ざってるな」
暮「混ざってるけど、腐ってるとか毒々しいとかそういうのでもないような……」
神「何か知ってる味なんだよな……」
暮「牧は朝気付かなかったのか?」
牧「いや、別に」
神「んーなんだろうこの味、お茶も混ざって思い出せない……」
暮「神、無理して飲まなくていいぞ」
神「でも、飲めない味じゃないんですよね」
形「まあな」
洋「いや俺には無理だ」
牧「おかわり」
暮「えっ?ああ……ハイ」
形「牧は美味そうに飲むな」
神「まるで毎日の日課のようにゴクゴクと……って、ああ!」
洋「神さん、どうしたの?」
神「わかったこれ、プロテインの味だ!」
形「何…………!?」
洋「道理で俺には免疫のない味だ」
暮「神もよくわかったな」
神「牧さんの飲みっぷりがあまりに様になってたから」
形「しかし何故、お茶に混ざってた……」
牧「あ……スマン俺だ。朝混ぜたの忘れてた」
洋「いや、なんでお茶に混ぜんの?」
牧「さあなんでだったか……」
神「牧さん、色々と大丈夫ですか?」
暮「前々からどっか抜けてるよな。でもまさか……」
形「老化現象?」
牧「…………」
形「プロテインの過剰摂取で脳も筋肉化して、人より早く老化が進むとか」
洋「花形さんが言うとマジっぽいな。意味わかんねぇけど」
暮「牧、少しプロテイン控えたらどうだ?」
牧「余計なお世話だ」
神「でもさすがにプロテ茶は……」
流「俺も飲む」
形「お、流川起きたのか……って、おい……!!」
暮「わわ、おい流川、裸!」
神「まさか全裸で寝てたとは……」
形「せめてパンツは履いてくれ」
流「わかった」
牧「全く何をしてたんだか」
洋「全身に残るキスマークが生々しかったな」
形「…………」
流「履いてきた」
牧「ホントにパンツだけか」
形「それにそのパンツ俺の……いや、まあいい」
流「喉乾いた」
神「乾いたのは結構だけど、これはプロテ茶だよ」
形「ほら、味見」
流「美味い」
洋「マジかよ……」
流「先輩の××の味」
牧「ブフ――――ッ」
暮「牧噴き出すなよ」
神「いや、今の一言はキツイ……」
形「……………」
洋「流川もそんなこと言うようになっちまったんだな」
牧「花形の躾がなってないんだ」
形「俺の所為なのか?」
神「躾とまではいかないけど、花形さんが流川をすごく甘やかしてるのはわかるよ」
流「俺はすごく甘やかされてる」
洋「……流川はなぜ俺を見るんだ」
暮「きっと流川が裸でウロウロしても何も言わないんだろうな」
形「…………」
神「もう流川が可愛くて仕方ないんですね」
形「…………」
牧「しかしそれが過ぎると今日みたいに、例え人前でも節度がなくなるぞ」
洋「花形さんも、ちょっとくらいいたぶってやんねぇと」
形「………………わかった。今度流川を合宿させる」
洋「可愛い娘には合宿をさせるってか」
神「でも、合宿ってどこに?」
形「四人の部屋」
暮「うちと神のとこ?」
流「ヤダ」
形「流川、少し言うこと聞いてくれ」
流「ヤダ」
形「流川、ちょっと……」

ここで二人寝室へ。

暮「今日の花形は引かないな」
牧「だからといってうちへ合宿に来られても困るが」
暮「そうか?一泊くらいなら構わないだろ」
神「うちは来られても常にどっちかが居ない状態だし」
洋「それに来たってグースカ寝てるだけだ」
暮「いや、布団くらい自分で持ってくるだろ」
牧「また裸で寝られても困るがな」
神「花形さんがいなければ別に……たぶん」

二人戻る。

形「ただいま。合宿はなしになった」
暮「え?」
神「花形さん、もう甘やかさないんじゃなかったんですか?」
洋「こりゃ流川に押し切られたな」
牧「流川のキスマークが増えてるのもおかしいだろ」
神「もう何処までも甘いですね」
流「俺の特権」
洋「だからなんで俺を見るんだよ」
暮「まあ、いいじゃないか」
神「なんだかどっと疲れたよ」
洋「涼しいのが名残り惜しいけど、もう帰りますか」
牧「そうだな。ああ、お茶は土産に置いていく」
流「牧さんスイマセン」
形「牧、お茶はいいがこのグリップは持ち帰ってくれ」
牧「おお、スマン忘れてた」
神「これは牧さんの躾も必要ですかね」
暮「はは、じゃあ今度牧も合宿に……」
形「やめてくれ」
流「邪魔」
洋「暑いしな」
神「もうプロテ茶はいらないや」
牧「……………」
暮「牧、あまり落ち込むなよ」
形「牧、プロテ茶なら返すぞ」


おわり