その14【バレンタイン・イヴ】

バレンタインを前に、洋平の呼びかけで集まった右の人三人。右三人から左三人へ一つのチョコを作ります。

洋「すいませんね、忙しいとこ。ただ手渡すだけで喜んでくれる人じゃないんで」
暮「いやいや。せっかくだから、うんと喜んでもらえるようにがんばろう」
流「(コクッ)」
洋「じゃあ、とりあえずどんなのにします?」
暮「うーん、なんといってもバレンタインだから、気持ちを込めるべきだよな」
洋「気持ちか……。それをどう形にすっか」
暮「ハート形にするだけじゃ安易だよな」
洋「それ以前やったらドン引きされました」
暮「神に?形には拘らないって感じだけど」
洋「味はまあまあだって食ってはくれましたけどね」
暮「そっか、味だ。味も拘るべきだな。牧もそんなに甘いの好きじゃないんだ」
洋「甘くねーチョコか。となっと………………」
流「カレー」
洋「なんでだよ」
流「チョコ味のカレーよりカレー味のチョコの方が甘くねー」
暮「それどこかで……」
洋「ウ◯コだろ」
暮「でも、カレーにチョコ入れるっていうよな」
洋「多少まろやかな甘みが出る。でも、それとこれとじゃ色々と違いすぎだ。カレー味のチョコなんてどう作ったらいいのやら」
流「カレー粉と混ぜる」
洋「いや、まあ……」
暮「味が想像つかないな。でもチョコ入りカレーで相性が実証されてるなら、意外と不味くはないのかもな」
洋「んー……………」
暮「ものは試しだ。一度作ってみればいい」
洋「メガネくんって変なとこいさぎいいよな」

スーパーへ、三人でお買い物♪

三十分後、帰還。

暮「えっとカレー粉に板チョコにトッピングに……ん?なんだこれ?」
洋「流川だ。ったく、なんで流川の菓子まで買わなきゃなんねーんだか」
流「食うから」
洋「まあいーから。まずはチョコを砕け。花形さんにもやんだから、ちゃんと手伝えよ」
流「チッ」

舌打ちと同時に、流川はパンチで板チョコを砕いた。洋平もまた蹴りで砕いた。

暮「おいおい、本当に気持ち込めてんのか……」
洋「メガネくんも、牧さんに対する不満の一つや二つあるっしょ?一発やっときゃスカッとしますよ」
暮「まあ、全くないわけじゃないがそこまでは……」
流「ハイ」

流川は木暮の前に板チョコ一枚を差し出した。

洋「素手に抵抗あんならこれで」

洋平は木暮にハンマーを手渡した。

暮「え?ハンマー?……あ……………」

木暮はうっかりそれを落としてしまい、チョコは見事砕け散った。

洋「牧さんって結構、ああ見えてナイーブっすよね」
暮「そうなんだよ。前に日焼けがどうこう言ったこと、未だに蒸し返すんだぞ」

そう言うと、木暮はもう一枚チョコを砕いた。

そして木っ端微塵となったチョコたちを鍋の中へ。どろどろに溶けたところでカレー粉が投入される。

暮「やっぱりカレーが臭うんだな。味見しておきたいけど……火傷しそうだ」
洋「まだいっすよ。それより、そろそろチョコ流すんで、適当に型を並べ…………」
暮「あ……。型買ってくるの忘れたな」
流「それならちゃんと準備してきた」
洋「お、珍しく気が利くな」
暮「なんの型だ?」

流川は持参した型?をそこに置いた。

洋「眼鏡だろ」
暮「しかもこの黒縁…………これ、花形のじゃないか?」
流「メガネ型」
暮「メガネ型にしたいのか?」
流「(コクッ)」
洋「でもこれ、花形さんのだろ?」
流「(コクッ)」
暮「花形は今日、眼鏡してないのか?」
流「たまにコンタクトだとドキドキするっつっといた」
暮「なるほどな」
洋「だからって眼鏡にチョコは流せねーよ」
暮「メガネの型はさすがに売ってないからな」
流「じゃーこれ」
洋「じゃーこれってただの菓子じゃ………ん?」



暮「懐かしいな、メガネチョコ(正式名称:ハイエイトチョコ)だ。小さい頃はこれを両目に当てて遊んだな」
流「これをチョコでコーティングする」
暮「アルミの外装ごとか?大胆だな」
洋「ったく、どんだけあの人に入れ込んでんだか」
暮「いいじゃないか。ある意味、気持ちが込もってるぞ」

こうしてメガネチョコは外装ごとカレーチョコでコーティングされ、三人からのバレンタインチョコは完成。

暮「あ、あとラッピングはどうする?」
洋「それも買うの忘れてたな」
流「俺が用意してきてやった」
洋「なに………………」


おわり