その10【暮誕】

神「おめでとうございます」
洋「メガネくんおめでとう」
形「おめでとう」
流「………」
暮「ありがとう。今日をずっと楽しみにしてたんだ。もちろん、去年貰ったのも大事にしてるぞ」
牧「またタンスが膨れ上がるのか……」

神「じゃあ俺からですね」




牧「……そう来たか」
暮「いいなこれ」
形「前回の"見取り図"にしなかったのか」
神「ええ。誰かと被ると思ったんで」
流「zzz……」
洋「………。」
暮「……あれ? 水戸くんどうしたんだ?」

洋「………被りました」




形「やったな」
牧「イラストなのか」
神「こんなことあるんだね」
洋「そんだけ神さんと気が合うんだ」
神「……偶然じゃないんだ?」
暮「はは、両方気に入ったよ。文字とイラストとそれぞれの趣があって最高だ」
牧「……木暮は心が広いな」
形「何を渡しても喜んでくれそうだな」

牧「次は俺だ。今年こそ愛を込めた」




形「………?」
洋「……本当に込もってますか?」
牧「込もってるも何も、そこの短冊に書いてあるだろ。木暮が小走るほど欲しがってたんだ」
形「そうだが、愛が込もってると言うなら多少選んでくるのが愛じゃないのか?」
神「誰かがそれにすると思ってたけど、まさか牧さんとは思いませんでした」
牧「………。」
洋「ほら、心の広いメガネくんも俯いちゃいましたよ?」
牧「………わ、悪かった」
形「貰えればいいって話じゃないんだ」
神「愛がないから、木暮さんも悲しいんですよ」
暮「ああでも、俺"愛"のTシャツは持ってるから別に」
牧「………だそうだ」
洋「じゃあなんで俯いてたんすか?」
暮「ああ実は……俺ずっと牧から貰いたいものがあったんだ……」
牧「な……なんだ?」
暮「……あれだ。愛知の星を見に桜木連れてった時の。あの全国区Tシャツ……」
牧「………。じゃあそれを短冊に書けばよかっただろ?」
暮「いや、これもこれで欲しかったからさ」
洋「心もストライクゾーンも広いんだな」
神「牧さんそれ、今も持ってるんですか?」
牧「……いや。桜木にやった」
形「なぜ桜木に……?」
牧「あのTシャツを羨ましがってたからだ」
暮「そ……、そうだったのか………」
洋「……メガネくん、俺今度花道に言ってみますから」

形「……俺だな。おめでとう」




洋「ブラメガネその2だ……」
神「確か何ボクロだっけ?」
形「俺はちゃんと選んできた」
暮「はは、すごく嬉しいよ」
牧「……一つ訊くが、こんなTシャツでも選んでくれば愛があると?」
形「当然だろ?」
洋「大事なのは結果じゃなくてそこに至るまでのプロセスだ」
神「気持ちだよね」
牧「……わかった」

形「……さて、流川を起こすか」

そう言って、いつかの目覚ましを再生。

流「………?」
牧「流川もちゃんと選んできたのか?」
流「(コクッ)」
暮「楽しみだな」

流「俺は泣かせる」




洋「これは………」
暮「流川これ………」
牧「………? な、泣いてるのか木暮!?」
形「……すごいな。参照すると陵南戦後の桜木の台詞らしいが」
神「でもこれじゃ、木暮さん留年ですね……」
洋「花道のやつ引退と卒業間違えたな」
暮「そこが桜木らしいんだ……」
洋「流川これ、花道に頼んだのか?」
流「断られた」
神「じゃあどうやって……」
流「マネージャーに頼んだ」
洋「……大事なプロセスだ」
牧「木暮、平気か?」
暮「……ああ。でも思い出したら本当にヤバイんだ。問題児のくせに、あの時だって堪えるのがやっとだったんだ。でも今は………」
形「一番愛が込もってるな」
洋「スゲェな流川」
流「知ってる」
神「木暮さん、もうこれ着る度に泣いちゃいそうですね」
暮「ああ、きっとそうなるな。ありがと流川」
牧「……流川よくやった」

流「………あともう一つ」
形「まだあるのか?」

流「これ」




洋「なに………!??」
神「え? これ本物? 桜木にあげたのになんで流川が……?」
牧「一体どういうことだ……」
形「桜木に言ったのか?」
流「マネージャーに頼んだ」
形「……何をどう頼むんだ?」
流「物々交換。俺がマネージャーに使用済みリストバンドやる→マネージャーがどあほうとデート→「桜木くん私、全国区Tシャツが欲しいの」→翌日俺にTシャツが届く」
神「……何て言うか、需要と供給をわかってやってるのがね……」
形「まるで歌舞伎町だな」
洋「ただの嫌なヤツだろ」
暮「はは、本当嬉しいよこれ本当に欲しかったんだ! ああ生きててよかったぁ」
神「(あ、もう泣いてない……)」
牧「……木暮、小走り過ぎだ」


神「……そしたら、次は牧さんの誕生日ですね」
形「確か、9月15日だったな」
牧「よく覚えてるな」
流「わかりやすいから」
牧「………。」
洋「牧さんの欲しい物ってなんですか?」
牧「俺は……特にない」
暮「牧もTシャツがいいんじゃないか?」
牧「それはいらない」
洋「じゃあなしっつーことで」
牧「それは……」
暮「牧、素直になれよ」
形「エステ券だろうが美容整形だろうが言ったもん勝ちだぞ?」
牧「………。」
神「何でもいいが一番困るんですから」
洋「適当でいいから言って下さい」
牧「そうか……じゃあ何でもいい」
洋「………。」
形「………木暮、牧は最近機嫌悪いのか?」
暮「いや。普段は普通だけど」
洋「最近気難しっすね」
神「まあ理由はわからないでもありませんけど……」
形「……なんだ?」
神「単純に、誕生日が嬉しくないんだと思います」
形「……なるほど」
暮「なんでだ? 嬉しいじゃないか」
洋「言うほど老けちゃいねぇと思うんだけどな。まあ監督だっつわれたら納得すっけど」
牧「………。」
形「そうなればプレゼントは決まりだな」
暮「え? 何なんだ? ちっともわからないぞ?」
流「何でもいいっつった」
暮「そうだったな。じゃあ結局Tシャツでいいのか」


おわり