その9【七夕】

7/7七夕。短冊に願いごと。

神「じゃあ俺から」

『センターをやってみたい』

牧「……やればいいだろ?」
神「前はやりたくて仕方なかったけど、一回やればそれで気が済む気もしてきたんですよね」
洋「やらせてやるべきだ」
形「今のチームでなら、俺が一試合抜ければいい」
神「あ、いいんですか?」
暮「神よかったな」
牧「その短冊はもう要らないな」
洋「次俺」


『身長が欲しい』

流「諦めろ」
神「程度にもよるけど、まず難しいね」
暮「大体どれくらい欲しいんだ?」
洋「そうだな……大男ばっかに囲まれて麻痺してる気もするし、そう高望みはしません」
形「大男………?」
牧「花形は、何してそんなにデカくなったんだ?」
形「別に何もしてない。ただ親父が元バレー選手で同じくらいある」
神「遺伝ですか」
洋「敵わねぇな」
牧「いくら七夕と言え遺伝は無理だろうな」
洋「俺は諦めませんよ。諦めたらそこで終了なんだ」
牧「………。次は俺か」


『少し痩せたい』

形「………?」
神「……牧さん俺、たかが短冊といえ嘘は良くないと思います」
暮「嘘なのか?」
牧「……別に嘘は吐いてない。最近少し体重が増えただけだ」
流「嘘は老け顔の始まり」
牧「………。」
洋「いくら七夕と言え整形は無理だからな。しかしだからと言って嘘はダメだ」
牧「………。」
暮「わからないぞ。織姫と彦星が叶えてくれるかもしれないんだから、自信持って書けよ。そこは大人になるなよ」
牧「だから別に………」
形「信じるヤツは救われる」
流「信じるヤツは若返る」
牧「………………。」
暮「次は俺だな」


『みんな元気でいられますように』

牧「こ、木暮………」
洋「メガネくん……」
神「木暮さん……」
暮「……?」
形「自分のことしか考えないヤツらとは違うな」
流「中身が違げぇ」
神「………。」
洋「すいませんね」
牧「……さすが木暮だ」
暮「今日もここで、みんなの顔見られるのが何より嬉しいんだ」
形「ここで膝を交えるのも一年を越えたからな」
洋「もうそんなになっか……」
牧「そもそも何故ここなんだかな」
神「それを言ったら、ここがどこなのかもわかりませんよ」
流「ここ」

……と流川が差し出したのが『ここ』の見取り図。




洋「こんなのあったのか……」
形「一体何のために……」
神「例の怪しい扉から席順まで載ってますね」
牧「……やたら内部に精通してるな。流川はこれを、誰から何所で受け取ったんだ?」
流「金貰ったから言えねぇ」
洋「買収か……」
形「やるな宇宙人」
暮「はは、宇宙人なのか」
神「実際現れてますからね」
流「銀色の全身タイツ着てた。これ以上は言えねぇ」
牧「……じゅうぶんだ」
形「次は俺だ」


『キャプテンをやってみたい』

神「………。」
牧「……自分のことじゃないか」
洋「いくら同じ眼鏡でも中身は俺らと変わんねんだ」
形「……まあそうだが、俺はメガネだ」
洋「は………?」
形「メガネであってメガネくんじゃない」
牧「………。」
暮「はは、花形はれっきとしたメガネだもんな」
牧「さっぱりわからない……」
神「花形さんは、今も副キャプテンですからね」
形「この先ずっとやることがないなら一度はやってみたい」
牧「木暮もそう思うか?」
暮「気持ちはわからないでもないが、俺は別にいいかな」
牧「まあやり甲斐はあるが、責任も重いぞ?」
形「ああ。統率力も問われれば人望も要る。決して楽でないのはわかってる」
牧「藤真に言えないのか?」
形「それは……今更感がある」
神「翔陽も実力で選ばれたんですか?」
形「もちろんだ。藤真は唯一一年でスタメン入りしたし、何より賢い」
暮「花形も頭いいんじゃないか?」
牧「……いや、賢いのは藤真だな。じゃなきゃ監督まで務まらない」
形「……まあ、一度やってみたいという好奇心に過ぎない」
流「……嘘。本当はやりたくて仕方ねぇ」
形「………。」
流「嘘吐くと眼鏡押さえるからわかりやすい」
牧「……花形、嘘吐きは老け顔の始まりらしいぞ」
神「(あ、気にしてる……)」
流「老け顔に始まりメラニンが増える」
洋「なんだそりゃ」
牧「………。」

流「…俺も全員のこと考えた」


『俺は日本一』

神「……どこが?」
洋「ただの天上天下唯我独尊男じゃねぇか」
暮「俺は信じてるぞ」
形「その前に、願いごとか……?」
牧「断定だもんな」
流「願い事なんてねー」
洋「またデケェ口叩くな」
流「ただの宣言」
神「宣言してどうするの?」
暮「これは彦星と織姫も少し困るか……」
形「日本一になることで、どこが全員のこと考えてる?」
流「フーッ、ったくどいつもこいつもわかってねー……」

……と呆れたように溜息吐いた流川は黒板の前へ。わかりやすく図解で示す。



形「全然わからない………」
牧「上のコマだけ理解してやる」
神「日本一からなんで天帝になるの? これがみんなのこと考えてるってなるの?」
流「くぁぁ………(欠伸)」
洋「神さん、これは突っ込んだら負けなんだ」
暮「俺もこんなTシャツは見た時ないな……」
牧「……それは、こんなTシャツが欲しいと言ってるのか?」
神「そういえば、木暮さんの誕生日まであと5日ですね」
形「そろそろTシャツ買わなきゃな」
牧「結局Tシャツか………」
洋「メガネくんは、"こんなTシャツ"がいんですか?」
暮「……んー、悪くはないけど、これだったらさっきの"ここの見取り図"がいいかな」
形「わ、わからない………」
神「わからないけど、問題はその見取り図Tシャツを誰が木暮さんにあげるかですね」
形「一人だけ選択に困らないってことか」
暮「え……? じゃあ貰えるのは確実ってことか?」
牧「……そう短冊に書いとけばいいだろう」
暮「はは、やった。じゃあそうするよ」
神「木暮さん一気にテンション上がりましたね」
形「もう書いて飾ってるくらいだ……」
洋「……結局自分のことしか考えねぇわな」
牧「木暮、そこで小走るな」
流「zzz……」


おわり