その8【父の日】

6/20父の日。
牧パパか形パパか暮パパか……

形「パパ………?」
神「三年組のうち誰がパパに相応しいかってこと?」
流「透パパ一択」
形「………。」
暮「花形が父親だったら俺みんなに自慢するな」
神「忽ち人気者ですね。バスケも出来て頭いいなんて、それでこの身長ならまずイジメにあう心配もないかな」
洋「そりゃ確かだ。でもプレッシャーもありますよ。なんで親父はデケェのに息子はチビなんだって、なんで親父は秀才なのにとくりゃキリがねー。子供によっちゃグレちまう」
流「デカくなればいい」
洋「日本男子の平均身長見てから言えよ」
流「171センチ」
洋「………流川は男を敵に回す天才だな」
流「俺は負けねぇ」
洋「………。」
神「俺はやっぱり木暮さんだなぁ。何て言うか、素直に言うこと聞ける気がする」
暮「そう?」
洋「俺もメガネくんだな。メガネくんに育てられちゃあグレる気がしねぇ」
神「2:1の割合で木暮さんと花形さんの要素があれば完璧な父親ってことかな」
形「ずいぶんと無理のあるまとめだな」
流「簡単」

そう言って、立ち上がった流川は木暮の眼鏡を外し、そこに花形の黒縁を……

洋「出た………」
暮「ははは……」
形「そんなにトトロが好きなのか」
神「まあ理想の父親像ではありますよね」
洋「2:1が疑わしいけどな」
形「木暮本体を2として、俺の眼鏡がその半分を占めることになるからな」
流「占めてる」
形「……そ、そうか」

暮「……それで、牧パパは?」
牧「……俺はいい」
暮「牧どうしたんだ」
形「今日はやけに静かだな」
牧「……言っとくが、俺は波平タイプじゃない」
神「(まさか、まだ気にしてたのか……)」
洋「波平ったって、ガミガミ怒鳴り散らすだけが波平じゃない。あの威厳を保つのも立派な父親の役割だ。父親っつーのはナメられたが最後。波平は立派な父親だ」
流「でも老けてる」
牧「………。」
暮「おい流川……」
流「ハゲてる」
牧「………。」
形「……波平に拘るのが悪い。他にも有名な威厳のある父親がいるだろう」
神「そうですよ。星一徹とか星一徹とか」
形「スパルタか……」
暮「でも子供を顧みない父親よりは好感持てるよ」
流「33歳にしては老けてる」
牧「ハァ………」
暮「お、おい牧……」
洋「牧さんは、父親ってタイプじゃないんだ。家庭に収まるというより愛人の家で飯食ってるような……」
神「家庭壊してるじゃん」
牧「俺はそんなことしない」
暮「イメージだイメージ。気にするなよ。牧はまず、仕事は一生懸命やるだろ?」
神「手抜きとは無縁ですね」
形「仕事一筋タイプか……」
流「ブタゴリラの親父」
洋「八百八………?」
神「はちまき巻いて『ラッシャーイ』って?」
暮「ああ、八百屋一筋だもんな。牧がはちまき巻いてるのもなんか似合うしな」
牧「………。」
形「ネクタイでもいいな」
洋「……酔っ払いか。なかなか想像出来るな」
牧「………。」
暮「おいおいみんな……」
神「……木暮さんも同罪ですよ」

牧が益々打ち沈む中、再び席を立った流川が一言。

流「こうすりゃいい」

木暮を前に、フッキーを手にした流川は妙に得意げだった。

洋「ハァ……」
形「俺も以前やられたな……」
暮「え……? 一体何したんだ?」

そうふためく木暮の左目の下に黒い点が輝く。

神「……2:1:1にしたんだ」
形「これが理想の父親像か?」
洋「まあ、本体がメガネくんならまず文句ねぇわ」
牧「もう木暮だけでいいじゃないか」
形「……とりあえず、眼鏡返してくれ」
暮「俺も見えないよ」

二人眼鏡を交換。

洋「やっとメガネとメガネくんに戻った」
神「……いや、木暮さんはメガネ黒子くんだよ」
形「……例のインテリボクロか?」
神「それは花形さんにホクロがあった場合です」
洋「メガネくんの眼鏡はインテリっつーより………レトロだな」
暮「じゃあレトロボクロ?」
神「はは、そんな感じ」
牧「もう辞書でもなきゃわけわからんな」
暮「じゃあ、眼鏡かけた牧は?」
形「それはただの牧だろ」

流「リーマンボクロ」

牧「………。」
神「……アリですね」
洋「なるほど言い得て妙だ」
形「働き者の父親って感じだな」
暮「だって。牧よかったな」


おわり